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 カプセル内視鏡について

はじめに 


今日では消化管疾患の診療に、内視鏡検査は欠かせないものになっています。
現在の内視鏡は、以前のファイバースコープからCCD を用いた電子スコープとなり、飛躍的に性能が向上しました。それでも検査の際には内視鏡を体内に挿入する必要があり、苦痛を伴う場合があります。
また、小腸を十分に検査することができないという弱点があります。
小腸は胃と大腸の間に存在する、長さ6ないし7メートルの臓器で、食べ物の消化吸収をはじめとする生命維持に不可欠な役割を担っています。
位置的に口からも肛門からも離れていて、長く曲がりくねっていることから、内視鏡検査が非常に困難で、小腸疾患の診療に難渋することも少なくありませんでした。
最近、内服薬のように口から飲み込まれたあと、消化管を通過しながらその内部を撮影することができるカプセル型の小型内視鏡、いわゆるカプセル内視鏡が開発・実用化されました。
検査を受ける方が飲み込むだけで消化管の撮影が行われるため、ほとんど苦痛を伴うことがありません。
また今まで困難であった小腸全体の観察が行えるという点でも非常に画期的な検査法であります。
イスラエルのGIVEN(R)Imaging 社が開発したPillCam(R)SB、と呼ばれるカプセル内視鏡は2001 年5 月にヨーロッパで、同年8 月にはアメリカで認可され、その後世界各国で診療に用いられています。
日本では2007年10月より、通常の内視鏡検査などで原因を特定できない消化管出血に対して保険で検査をおこなうことができるようになりました。

 

 

カプセル内視鏡システムの概略 


カプセル内視鏡のシステムは、
(1)検査を受ける方が飲み込むカプセル内視鏡本体、
(2)カプセルから送信された画像データを受信するセンサーおよびハードディスクを内蔵したデータレコーダー、
(3)撮影された画像を処理する専用のワークステーション、
という3つの機器で構成されています。カプセル内視鏡本体の内部構造を簡単に解説します。カプセルの片方の先端は透明なドーム状になっていて、小腸内で絨毛と接触することで内容物の付着を防ぎ、常に良好な視界を保つように設計されています。透明ドームの奥に配置されたレンズは、ドームが小腸壁に接する部位でピントがあうように工夫されています。6個の白色LED から、毎秒2 回照明光が発光されます。画像センサーにはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor) Imager が採用されていますが、これは消費電力が非常に少なく、時計用のボタン電池2個で8時間程度の動作が可能となっています。またCCDcharge-coupled device、電荷結合素子)と比べて低価格で、カプセル内視鏡の価格をおさえられるという利点もあります。透明ドームの反対側には発信器が内蔵されています。人体にほとんど影響のないUHF バンドのラジオ波を発信することにより撮影した画像データを体外に送信しています。
カプセル内視鏡本体は毎秒2 枚の画像を撮影します。その画像は、検査を受ける人の腹部に貼り付けられたセンサーを介してデータレコーダーに送信され保存されます。センサーは全部で8個あり、腹部の所定位置に貼り付けられます。カプセル内視鏡本体からのシグナルを、それぞれのセンサーが受信する際、その強弱によってカプセル内視鏡の体内でのおおよその位置がわかるようになっています。
 

 

カプセル内視鏡検査の実際 


実際のカプセル内視鏡検査の手順を概略します。
検査前の準備は従来の上部消化管内視鏡検査とほぼ同じです。
検査を受ける方は前日の夜から8時間ないし12時間絶食します。
検査当日、腹部に8個のセンサーを貼り付け、専用ベルトにデータレコーダーと体外バッテリーをセットします。
機器の動作を確認してから、カプセル内視鏡本体を適量の水とともに飲み込みます。
カプセル内視鏡を飲み込んだ2時間後には水分摂取が、4時間後には軽い食事も可能となります。
強い磁気にさらされたり、激しい運動をしたりさえしなければ、自由に行動でき仕事をすることも可能です。
つまり検査中も通常の日常生活が行えるということです。
従来の24時間心電図検査に近い印象です。
カプセル内視鏡本体は、作動開始後毎秒2枚の写真を撮影し、1回の検査あたりの撮影枚数は、50,000~55,000 枚になります。
カプセル内の発信器から送信された画像データは、腰に装着したデータレコーダーにすべて保存されます。
カプセル内視鏡を飲み込んだ8時間後にセンサーなどの機器をはずし、撮影された画像データをデータレコーダーからworkstation に転送します。
5万枚以上の静止画像を診断するために、個々の画像は連続したビデオ画像として表示され、医師によって解析されます。
ワークステーション上では最大毎秒40コマの早送りが可能であり、経験に応じて解析のスピードを調整できます。
異常が疑われた部分では停止したり、コマ送りあるいはコマ戻しを行ったりして病変を確認することができます。それらの病変は、サムネイル画像として保存し、所見やコメントを記入することができます。
なおカプセル内視鏡本体はディスポーザブルであり、排便とともに体外に排出されます。
カプセル内視鏡検査は、鎮痙剤や鎮静剤を必要としません。
腸液が貯留したままの消化管内腔を、蠕動運動に伴って進んでいくため、生理的な状態で撮影が行えます。またほとんど体に負担のない検査なので、繰り返し行うこともできます。
カプセル内視鏡の画像は8倍の拡大画像であり、小腸の絨毛の構造をかなり明瞭に確認することができます。なおカプセル内視鏡は腸管内を前向きに進んでゆくように、重心が前方、つまりレンズ側に位置していますが、検査中後ろ向きに進む場合も少なくありません。
その場合でも撮影された画像の診断に支障はありません。

 

 

カプセル内視鏡検査の適応と問題点 


カプセル内視鏡検査の適応は、上部消化管・下部消化管内視鏡検査など従来の検査法で出血源がわからない消化管出血であります。
出血した時から時間を空けずに検査を行えば、より診断率が高くなります。カプセル内視鏡検査の問題点としましては、カプセルの通過が遅れる事および消化管内滞留があげられます。
糖尿病などで消化管の運動機能が低下している場合には、食道や胃の通過時間が長くなり、肝心の小腸の撮影ができないことがあります。また頻度は比較的低いもののカプセル内視鏡のほぼ唯一の合併症として、カプセルの体内への滞留が挙げられます。
消化管にカプセルが通過できないような狭窄が存在する場合には、長期間カプセルが体内に留まることがあります。消炎鎮痛剤を長期間内服している人、腹部の放射線治療を受けた人、クローン病による小腸狭窄のある人におこりやすいとされています。このような場合でも腸閉塞などの症状が生じることはほとんどありません。
しかし、長期間排出されず体内に滞留したままの場合には、内視鏡で回収するか腹腔鏡下手術などの外科的処置が必要になることもあります。
従って、滞留した場合に外科的処置による回収が行えないような人、あるいはそのような処置に同意できない人には、検査をすべきでないという考えもあります。
また検査前に消化管の狭窄や瘻孔が認められている場合や、妊婦、ペースメーカーなどの電子機器を体内に埋め込んでいる場合もカプセル内視鏡検査の適応外となります。

 

 

カプセル内視鏡の現状と展望  

PillCam(R)SBは、主に小腸を対象としており、一般的な胃や大腸を目的とした内視鏡検査に取って代わるものではありません。しかし欧米では食道や大腸観察用のカプセルが実用化されています。また近い将来には体外からコントロール可能な機器も登場すると予想され、全消化管をカプセル内視鏡で検査できる日が来るかもしれません。

【カプセル内視鏡センター 白川 勝朗】

*「カプセル内視鏡画像」ページに図版が掲載されています。なお、先生の音声に従って資料画像が展開する上記番組のストリーミング放送は、http://medical.radionikkei.jp/igakushoten/ 
からご覧になれます。


出典:●医学の焦点● ラジオNIKKEI/2005 年2月14日21 時15 分~21 時30 分
提 供:ミノファーゲン製薬